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#94 ラーニングアナリティクスのはじめ方⑦UI設計:教育ダッシュボードのUI設計プロセス

UIデザイン設計

エビデンスに基づいた学習環境の改善を行うことで、学習効果を最大化させ、教育の負担を最小化させるために重要な位置づけとされるラーニングアナリティクス。

前回は教育ダッシュボードをベースに、蓄積したデータを可視化し、民主化することの重要性についてお話ししました。

今回はユーザーインターフェイス設計( UIデザイン)についてお話します。

【 目次 】

  1. これまでの内容
  2. UI 設計の重要性
  3. UI(ユーザーインターフェイス)とは
  4. UI 設計のプロセス
  5. 1)ターゲットの特定

 

 

これまでの内容

ラーニングアナリティクス環境を構築する手順として、以下のような流れでお話しています。

プランを立てる
チームを作る
教材やツールをまとめる( LTI )
学習行動データを標準化する( xAPI )
横断的な学習行動データを蓄積する( LRS )
学習行動を可視化する(教育ダッシュボード)
⑦ データの利活用を促進する(UI設計1:プロセス) ←今回はココ
⑧ データの利活用を促進する(UI設計2:実装)
⑨ 外部の教材と連携する( DeepLink )

前回はデータを可視化することの有効性をお話しましたが、今回はどのようにダッシュボードを可視化するか、UI設計のノウハウについてお話します。
 

 

UI 設計の重要性

LRS に蓄積した学習行動データダッシュボード等で可視化し、共有することによって、データの活用範囲が大きく変わるというお話をしました。
とはいえ、世の中には様々なものが可視化されていますが、”わかりやすいもの” と “わかりにくいもの” があります。

可視化されたもののわかりやすさ、わかりにくさの違いは、ユーザーインターフェイス(以後 UI)に大きく依存します。

せっかくデータを民主化することで利用できる人の数を増やしても、わかりにくくて半分の人が利用をあきらめてしまっては、効果が半減してしまうのです。

逆にいえば、わかりやすいだけでなく、利用することのモチベーションを高めるようなインターフェイスを実現できば、視覚化の効果をさらに向上することができます。

そこで大切なのが UI 設計。

UI 設計には様々なノウハウが存在します。
今回は UI 設計の「プロセス」を中心に、そのノウハウを解説したいと思います。
 

 

UI(ユーザーインターフェイス)とは

UI といえば、今回のお話のような画面上の視覚的なものだけでなく、より幅広い意味を含みます。

ディスプレイに表示される内容ももちろん UI となりますが、マウスやキーボード、タッチパッド、マイクやスピーカー、カメラなど、「ユーザーとサービスの接点」となるものを幅広く指します。

今回の記事では LRS に蓄積された学習行動データを可視化するにあたって、ユーザーができるだけ理解しやすくするためのグラフィックの設計についてお話しますので、正確にいえば「グラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)」となります。とはいえわかりやすくするために、ここでは GUIを含む「UI」という一般的な表現を利用させていただきます。
 

 

UI 設計のプロセス

データの可視化

UI 設計には以下のようなプロセスを含みます。

1)ターゲットの特定
2)ターゲットのゴール設定
3)ゴールまでのルート設定
4)情報の整理
5)UI の実装

実際にスパイスワークスでラーニングアナリティクスなどのアプリケーションの UI 実装をお手伝いする際には、UI を実装する前にワイヤフレームやモックアップを作成したり、UI テストを実施したり、また実装後には効果検証を行います。

しかし今回は、ラーニングアナリティクス環境をはじめて構築しようとする方が、 UI 設計の重要なプロセスと考え方をご理解いただけるように、シンプルにお伝えしたいと思います。

上記であげた5つのプロセスについて、以下でご説明します。

1)ターゲットの特定
具体的には教育ダッシュボードを利用するターゲットとなるユーザーを特定します。
教育ダッシュボードの場合は主に「教員」と「学生」をターゲットとします。

2)ターゲットのゴール設定
ターゲットとなるユーザーが、このダッシュボードを使って「得られる成果」を設定します。
ターゲットとなる教員や学生は、その「成果」を得ることを動機として、教育ダッシュボードを利用することになります。

3)ゴールまでのルート設定
ターゲットが得られる成果を設定するだけでなく、その「成果を得るまでの道のり」を想定します。

4)情報の整理
ターゲットが得られる成果(ゴール)にたどり着くまでの道のりを想定したことにより、その道のりでどのような情報が必要なのかという仮説を立てることができます。その仮説をもとに必要な情報を特定し、整理します。

5)UI の実装
ターゲットがゴールにたどり着くまでに必要な情報を、どのように可視化すればわかりやすいかを検討し、UIを実装します。

ここまで教育ダッシュボードのをデザインするための UI設計について、そのプロセスを解説しましたが、今回の記事内で、実際に「ターゲットの特定」まで取り上げたいと思います。

「ターゲットの特定」について解説する中で、 UI 設計の全体的なプロセスのつながりや、その考え方もご理解いただけるかと思います。

 

 

1)ターゲットの特定

eラーニングで学習する大学生

UI設計といっても、いきなりデザインの話になるわけではありません。

デザインに入る前に、表示する情報を整理する必要があります。

教育ダッシュボードといっても、 LRS に蓄積された全ての学習行動データを可視化すればよいわけではありません。情報量が多すぎてわかりづらくなれば、データの有効活用が妨げられます。

統計の専門家ではない現場の教員や学生がデータを活用できるよう、それぞれのユーザーにとって必要なデータのみを絞り込み、わかりやすいインターフェイスで可視化することが重要なのです。

情報を選択するために最初に行うことは、「ターゲットとなるユーザーを特定する」ことです。

ユーザーインターフェイスはユーザーとサービスの接点(ダッシュボードでいうと「教員や学生」と「学習行動データ」の接点)となるものですので、まずはターゲットとなるユーザーの設定が重要な土台となります。

前回の記事で、学習行動データを活用するターゲットとして、以下4つの階層をあげました。

①国や地方公共団体
②学習環境の管理者
③教員
④学生

その中でも、国や地方公共団体の管理者や学習環境の管理者はシステムや統計の知識を持っている可能性が高いので、可視化しなくてもデータを分析できる可能性があります。

しかし教員や学生はシステムにアクセスする権限や統計に関する知識もあるとは限りません。
また同時に、教員や学生がデータを利用できるようになるとターゲットの裾野が大幅に広がるので、データを可視化し、共有する効果が高いことをお話しました。

そう考えると、教育ダッシュボードの主なターゲットは「教員」と「学生」と考えればよいでしょう。(実際には各教育機関によってターゲットが異なりますが、ここでは説明のための一例としてターゲットを仮に設定しています)

次回は、「教員」と「学生」をターゲットとして、 UI 設計の「2)ターゲットのゴール設定」以降のプロセスについて、具体的な例をもとにお話したいと思います。

スパイスワークスでは多くのラーニングアナリティクスプロジェクトに、コンサルティング、研究支援、システム開発、サーバー設定、UIデザインなど、全般的に携わってきました。ご興味やご不明点があればお気軽にご相談ください