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#88 ラーニングアナリティクスの始め方①プランを立てる

ラーニングアナリティクスの構築
先進的な教育機関では導入が進み始めているラーニングアナリティクス
文部科学省が推進する「教育DX 」の中でも、「教育データの利活用」として重要な位置づけにある技術です。

導入するメリットの大きいラーニングアナリティクスですが、技術的なハードルもあり、まだ一部の教育機関でしか活用されていません。
それゆえラーニングアナリティクス導入の有無によって、教育環境の格差が広がる懸念もあります。

教育環境の格差は学生の有効な教育機会の格差とも直結しますので、今回の連載ではラーニングアナリティクスの最もシンプルな導入方法について解説します。

一連の記事における内容さえざっくりと理解していただければ、ラーニングアナリティクス環境の構築に足踏みすることはないかと思います。

【 目次 】

  1. ラーニングアナリティクスとは
  2. なぜラーニングアナリティクスが必要か
  3. なぜラーニングアナリティクスの導入に戸惑うのか
  4. すでに確立されつつあるラーニングアナリティクス手法
  5. ラーニングアナリティクス環境構築のコツ
  6. ラーニングアナリティクス環境構築の最も効率的な手順

 

 

ラーニングアナリティクスとは

昨今注目を集めているラーニングアナリティクス。

教育DXの中でも重要な位置を占めるとはいえ、「一人一端末」など、視覚的に見えやすいハードウェアの部分ではないので、メディアなどではまだあまり取り上げられることがありません。
しかし今後の教育環境の向上においては、縁の下の力持ちとして非常に重要な位置づけとなることは間違いありません。

ラーニングアナリティクスとは、簡単に言えば学生の学習行動をデータとして蓄積し、それを分析して教材の改善や教員の配置など、学習環境の向上につなげる取り組みです。

ラーニングアナリティクスでどのようなデータを取得してどう活用するか、具体な内容はこちらをご覧ください。
 

 

なぜラーニングアナリティクスが必要か

教員不足が叫ばれ、改善の兆しが見えないこれからの時代では、教員の負担を下げることは待ったなしの最重要事項です。

もちろん、教員数が減少しないように対処することは大切ですが、現実的に就業人口の減少は避けられず、状況の改善が難しい課題です。

教員不足で個々の負担が重くなれば、さらに状況は悪化するでしょう。

教員の負担軽減は猶予のない状況です。
そのためにも教務のデジタル化とともに、ラーニングアナリティクスで有効な教育環境を構築することが重要となってきます。

ラーニングアナリティクスを活用すれば、熟練教員の勘に頼るのではなく、データを分析し、デジタルを活用して、教育の「人依存」を軽減することが可能です。

またラーニングアナリティクスは、文部科学省のいう「個別最適な学び」を実現することにもつながります。

今までは教員が常時学生に目を配り、各自の状況に応じて適切なタイミングでサポートするという、熟練でなければ難しいと思われる高等な技能が必要とされました。
ラーニングアナリティクスを活用すれば、学生の学習状況を監視して、必要な時に自動的に通知やアドバイスを発することができますし、学習状況に応じて最適な教材を提案することも可能です。

教育DX
 

 

なぜラーニングアナリティクスの導入に戸惑うのか

とはいえラーニングアナリティクスといえば、その環境構築にシステムの開発が必要となります。

技術的にも新しい分野ですので、 LTI, Deep Linking (DL 、ディープリンク), xAPI, LRS など、他では聞き慣れない様々な専門用語が飛び交い、また現状でいえばウェブサイトを検索しても日本語の文献が少なく、なかなか技術者以外の人が理解できる、わかりやすい解説に出会うことができません。

また、たとえラーニングアナリティクス環境を構築して、学習行動データを取得できたとしても、そのデータを分析し、有効に活用することができるかという部分(データ分析)にハードルを感じられるケースもあります。

このような状況から、現状では一歩を踏み出すハードルが高く、以下のような状況で踏みとどまっているケースが多いかと思います。

・検討はしているがまだ手を付ける段階にはなっていない

・対応できる技術者が不足しているので今は様子見
 

 

すでに確立されつつあるラーニングアナリティクス手法

とはいえすでにラーニングアナリティクスの最前線では研究実績も出ており、弊社が関わってきた研究プロジェクトだけでも様々な論文が出稿され、その成果が報告されています。

また、ラーニングアナリティクス環境を構築するための世界的な標準技術も確立されつつあります。

具体的かつシンプルに言えば、前述の LTI という技術標準で教材やツールの情報をまとめ、 xAPI という形式で LRS というデータベースに学習行動データを保存するという方法です。

LTIシステム構成図

「1EdTech LTI® 1.3 and LTI Advantage」と「教育・研究支援システムのデジタルエコシステム化〜LTI連携を中⼼に〜 常盤 祐司 2022.08.04」を参考に図を作成

もちろん他の技術を利用することも可能ですが、このような世界標準の技術を使っておけば、学内だけでなく世界各国の教材とシームレスに教育システムを連携することも可能になりますので、この標準技術を使わずに独自のシステムを構築する選択肢はないでしょう。

また、取得したデータをグラフなどで可視化する手法もこれまでの研究で紹介されていますので、データ分析についての専門的な知識がなくても学生の学習行動を把握することが可能になっています。

あとはこれらの知識を持ち合わせた組織内外のパートナーとチームを作ることができれば、先は見えてくるのです。

 

 

ラーニングアナリティクス環境構築のコツ

確かに「ラーニングアナリティクス」とひとくくりに考えれば、そこには多くの最新技術や知見が含まれており、いかにもハードルが高く感じてしまいます。

しかし、私たちの経験から言えることは、ラーニングアナリティクスを一気に進める必要はありません。

順をおって一つひとつの段階を踏みながら学習行動をデータ化し、教育 DX を進めてゆけば、徐々に教育環境が向上されてゆきますし、最終的にはラーニングアナリティクス環境の構築を実現することができます。
 

 

ラーニングアナリティクス環境構築の最も効率的な手順

弊社では、具体的に以下のようなプロセスで学習環境の DX 化を進めることをお勧めしています。

①プランを立てる

②プロジェクトチームを作る

③教材やツールをまとめる

④横断的な学習行動データを取得する

⑤取得した学習行動データを可視化する

これらを一つずつ積み重ねていけば、確実にラーニングアナリティクス環境を構築することができます。

そしてここまでのプロセスを達成してラーニングアナリティクスを実現できた段階では、学外の教材と連携する準備も整います。

⑥外部の教材とリンクする

今回の記事では「①プランを立てる」という部分について、ラーニングアナリティクス環境を構築するうえでの最も効率的な手順をご紹介しました。
着実にラーニングアナリティクス環境・教育 DX を構築するには、この①~⑥のプロセスが最も効率的でシンプルなプランかと思います。

もちろん時間がなければ一気に進めることも可能ですが、上記の方法ですとプロセスが進むと同時に学習環境が徐々に改善されますし、未経験のご担当者様でもノウハウを学習しながら進行することができます。

今後一連の記事で、はじめてラーニングアナリティクスに取り組もうとするプロジェクト担当者様が、不安や迷いなく環境構築を進められるように、順をおって解説していきたいと思います。

次回はラーニングアナリティクスを開発するための「プロジェクトチームの構築」ラーニングアナリティクスを開発するための「プロジェクトチームの構築」についてお話します。

株式会社スパイスワークスでは、ラーニングアナリティクスのシステム環境構築において、国内有数の実績を保持しています。
ご不明点やご相談などあればお気軽にご相談ください


【出典・参考文献】
・文部科学省 :教育DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進について
・文部科学省 :教育データの利活用に関する有識者会議
・文部科学省 : 育成を目指す資質・能力と個別最適な学び・協働的な学び
・AXIES 大学ICT推進協会 : 2022年8月4日 教育・研究支援システムのデジタルエコシステム化 ~LTI連携を中心に~(Fun@Learn 代表 /常盤 祐司)