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#60 文系でも理解できる教育DX:LTI 1.3 編

e-Learning
前回の記事(#59 文系でも理解できる教育DX:LTI バージョン編)では、「LTI」のバージョン 1.1 と 1.3 の違いについて、概略をご説明しました。

LTI 1.1 と比べ、 LTI 1.3 では機能が飛躍的に向上していますので、今回は LTI 1.3 で実現できる内容について、具体的な例とともに説明させていただきます。

【目次】

  1. LTI 1.3 に追加された機能
  2. Names and Role Provisioning Services (NRPS) とは
  3. Deep Linking とは
  4. Assignment and Grade Services ( AGS )とは
  5. LTI 1.3 の現場で起きていること
  6. LTI 1.3 活用の教育現場でのメリット
  7. ラーニングアナリティクスを実現するためのシステム構成

 

 

LTI 1.3 に追加された機能

前回の記事では LTI1.3 で追加された機能について、以下3点をあげています

・Names and Role Provisioning Services (NRPS)
・Deep Linking (DL 、ディープリンク)
・Assignment and Grade Services (AGS)

LTI 1.3 で上記の機能が追加されることで、 LTI 活用の幅が飛躍的に広がっています。
ここからはそれぞれの項目について、具体的に説明させていただきます。
今回の記事をご覧いただくことで、 LTI 1.3 で何ができるかご理解いただけると思います。
 

 

Names and Role Provisioning Services (NRPS) とは

名称のとおり、「名前」と「役割(生徒、教師、TAなど)」のデータを受け渡すことができます。

LTIは、デフォルトの設定ではユーザー情報を渡しませんが、 Names and Role Provisioning Services (以下 NRPS ) を使用すると、安全かつセキュアな方法でユーザー情報を渡すことができます。

ここでは具体的な例をあげて説明します。

前々回の記事(#58 文系でも理解できる教育DX:LTI 編)文部科学省が提供する MEXCBT というCBTシステムについて触れましたが、講師が LTI を介して、こういった外部のテストを実施する際に、クラス内の学生をいくつかのグループ(理解度別など)に振り分けようとすれば、学生のユーザー情報が必要となります。
こういった時に NRPS を使用することで、 Platform で管理される名簿から ,役割,姓名,メールアドレス,ユーザ ID といった情報を Tool で取得できるようになります。
 

 

Deep Linking とは

1EdTech によると、「 Deep Linking は、プラットフォームが外部ツールから収集したコンテンツをより簡単に統合することを可能にする仕様。」としています。

これだけでは文系の私にはわかりづらいので、こちらも具体的な例でご説明します。

こちらも MEXCBT をあげますが、教員が学生に MEXCBT の英語テストを受験させたいとします。
この時、全ての単元を受験させるのではなく、「現在進行形の基礎問題」と「現在進行形に関する長文読解問題」だけを受験させたいということであれば、 Deep Linking によって、受験させたい内容のみ選択して学生に受験させることができます。

具体的には、教員がプラットフォームからツール(今回の例では MEXCBT )を呼び出し、選択画面から英語の「現在進行形の基礎問題」と「現在進行形に関する長文読解問題」を選びます。
そうするとこれらを起動するパラメーターが表示されますので、学生が特定の URI で MEXCBT を起動すれば、教員が意図した問題のみ表示するように設定することができます。
 

 

Assignment and Grade Services ( AGS ) とは

Assignment and Grade Services (以下 AGS ) を解説しようとすると、どうしてもシステム的な内容になってしまうことをご容赦ください。できる限り簡素に、わかりやすくしたつもりではいます。

AGS は学校側で成績などを管理する Platform と、 LTI 1.3 で起動される学内や外部のツールとの成績データのやりとりをするための標準規格です。

LTI 1.1 でも Basic Outcomes service によって、0.0~1.0の範囲の10進数の数値成績のみであれば、成績情報をやりとりすることができるとご説明しましたが、 AGS はこの、Basic Outcomes サービスに代わるもので、その機能が大幅に拡張されています。

1EdTech は、 AGS は以下3つの機能を提供していると、述べています。

LineItem Service:
( Tool が Platform 側にカラムを追加することができる)

Score Service:
( Tool が Platform 側に成績を書き込むことができる)

Result Service :
( Tool が Platform の成績表から現在の成績を取得することができる)

これだけでは、何ができるかというイメージがしづらいと思いますので、具体的な例をあげます。

例えば、「学生が MEXCBT のような外部のテストツールを使ってテストをすると、結果としてツール側で学生が見ている画面に、他の学生と合わせてスコアボードを表示する仕組み」を作ることができます。
具体的なシステムの動作としては、以下のようになります。

①学生がテストを開始すると、 LineItem Service により Tool が Platform 側にScore や Time などのカラムを追加する。

LineItem Service

②学生がテストを終了すると、Score Service により①で追加したカラムに 成績や実施時間の値を書き込む。

Score Service

Result Service により Tool 側が Platform から成績、実施時間を取得し、前述した NRPS で取得したユーザーID 、ユーザー名と紐づけてスコアボードを表示する。

Result Service

AGS の機能を実際に利用したシンプルな例として、このようなデータの受け渡しをすることが可能です。
 

 

LTI 1.3 の現場で起きていること

弊社でも LTI のバージョン関連で受託開発のご相談をいただく機会が増えていますが、以下のような内容が多くなっています。

① LTI 1.1 をベースに開発したものを LTI1.3 にバージョンアップしたい

② LTI 1.3 を導入して MEXCBT などの外部ツールに連携できるようにしたい

③自社のツールを既存の学内のプラットフォームから、 LTI 経由で外部ツールとして利用できるようにしたい

また上記のような具体的な内容でなくとも、「 LTI 1.3 を利用することになったが、どうしていいかわからない」という段階からコンサルティングに入らせていただくケースも多いです。
スパイスワークスでは LTI 関連の開発において、国内でも有数の実績があります。
学習システムの LTI 化、 LTI 1.3 へのバージョンアップを検討されているようでしたらこちらからご相談ください
 

 

LTI 1.3 活用の教育現場でのメリット

教育DXの未来
ここまでの長い説明にお付き合いいただきましたので、以前にご説明した LTI 化のメリットについて、より詳しくお話ができます。

LTI を導入することで、学ぶ側も便利になり、また何より、忙しい教員の時間も削減することができます。以下、1EdTec のサイトで述べられている内容をもとにまとめました。

AGS は、複数のソースからの成績、進捗、コメントをLMSプラットフォームの成績表にシームレスに同期させ、教員の労力とミスの可能性を大幅に削減します。

ディープリンク( Deep Linking )は、コースやプログラムを開発する際に、学生のグループごとに理解度にマッチしたコンテンツを選択し、教員がそのコンテンツへのリンクを設定できるなど、 LMS プラットフォームとの間の自然で効率的なユーザーワークフローをサポートし、ここでも教員の時間を節約することができます。

NRPS は、コース名簿/登録情報をリクエストツールと安全に共有し、ユーザーの体験を向上させ、管理者に誰がツールを使用したか、また誰が使用していないか(ここが重要)についての情報を提供することができます。
 

 

ラーニングアナリティクスを実現するためのシステム構成

今回まで3回にわたり、以下、ラーニングアナリティクスを実現するシステム構成を説明する文章の、「LTIでLMSや教材・ツールをまとめ、」の部分について説明させていただきました。これで LTI についてはかなりご理解いただけたのではないかと思います。

LTIでLMSや教材・ツールなどをまとめ、LRSにxAPI形式でデータを保持することでラーニングアナリティクスの環境を構築する。

次回から「LRSにxAPI形式でデータを保持する」という部分の説明に入ります。次回は xAPI について説明させていただきますので、上記文章全体を把握いただけるゴールがようやく見えてきました。


【出典・参考文献】
・1EdTec :
Learning Tools Interoperability Names and Role Provisioning Services
Learning Tools Interoperability (LTI)® Deep Linking Specification
Learning Tools Interoperability (LTI) Assignment and Grade Services Specification
Trusted Exchange of Student Data
Why Platforms and Tools Should Adopt LTI 1.3

・IPS 一般社団法人情報処理学会 : 学習基盤を拡張する国際技術標準 IMS LTI 1.3 第1回 LTI 1.3の機能と意義(常盤祐司・山田恒夫)
・AXIES 大学ICT推進協会 : 2022年8月4日 教育・研究支援システムのデジタルエコシステム化 ~LTI連携を中心に~(Fun@Learn 代表 /常盤 祐司)