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#59 文系でも理解できる教育DX:LTI バージョン編

大学での教育DX
前回の記事(#58 文系でも理解できる教育DX:LTI 編)では、「LTI」の概要についてご説明しました。

実際に教材やツールの LTI 化を進めようとすると、多くの人は LTI にバージョンがあることに気づくでしょう。
実は LTI と言ってもバージョンによってできることが変わるので、実際に前回の記事でご紹介した内容も、全てのバージョンで実装できる機能というわけではありません。

今の段階ですと、迷われるのは LTI 1.1 か 1.3 かだと思います。今回は弊社でも開発実績のある LTI 1.1 と LTI 1.3 の違いについてご説明します。

【目次】

  1. LTIバージョンの推移
  2. LTI 1.1 と LTI 1.3 の違い:セキュリティについて
  3. LTI 1.1 と LTI 1.3 の違い:機能について
  4. ツール (Tools )とプラットフォーム (Platform) とは
  5. LTI の現場で起きていること
  6. ラーニングアナリティクスを実現するためのシステム構成

 

 

LTIバージョンの推移

IMS GLC (現在の 1EdTech) は 2010 年に LTI の初めてのバージョン、 Basic LTI と言われた 1.0 をリリースしました。その後 LTI 1.1 がリリースされ、弊社が初めて LTI を利用するプロジェクトに参加させていただいた時は LTI 1.1 が主流でした。現在は LTI 1.3 が主流となり、弊社でも LTI 1.3 のプロジェクトが複数同時に動いています。
1EdTech (旧 IMS Global Learning Consortium)によると、2019年4月に最新バージョンである LTI 1.3 が公開され、2022年6月に 1.1 のサポートは非推奨とされました。同時に 1.1 に関連するDeep Linking 1.0、Names and Role Provisioning Service 1.0、およびBasic Outcomes 1.0 などのサービスも非推奨ということになっています。
> Security Update and Deprecation Schedule for Early Versions of LTI (1EdTech)

LTI 1.1 から LTI 1.3 へのアップデート内容は、「セキュリティの強化と機能の整理」です。ここから具体的な違いについてご説明します。
 

 

LTI 1.1 と LTI 1.3 の違い:セキュリティについて

セキュリティに関する内容を文系的な文脈で説明するのは非常に困難なので詳しくは割愛しますが、 1EdTech による文章を要約すると以下のようになっています。

認証サービスに業界標準のプロトコル IETF OAuth 2.0を採用し、安全なメッセージ署名に JSON Web Tokens (JWT) を使用、 Open ID Connect ワークフローパラダイムを採用しており、独自のセキュリティスキームや OAuth 1.0 のバリエーションを使用する非標準または古い LTI の実装は、脆弱性があり、 LTI 1.3 の方が管理責任者およびセキュリティ責任者に安心感を与える。
> Why Platforms and Tools Should Adopt LTI 1.3 (1EdTech)

上記はかなり技術的な内容ですが、いずれにしても「 LTI 1.1 より LTI 1.3 の方がセキュリティが強化された」ということは間違いないようです。
 

 

LTI 1.1 と LTI 1.3 の違い:機能について

教材やツールを LTI 化するにあたり、また、LTI 1.1 以前のバージョンで開発したものを LTI 1.3 にアップデートするにあたっても、最も気になるのは LTI 1.1 と 1.3 の機能の違いだと思います。

まずは LTI 1.1 の機能です。
・OAuth認証によるシングルサインオン接続
・トークン(暗号化情報)の受け渡し
Tool*内のテストの呼出しと実行

LTI 1.1 で最も便利なのはシングルサインオンです。
これにより、各教材やツールをシームレスに移動することができ、それぞれのツールごとにログインする必要がなくなりました。もちろん、 LTI 1.3 にもセキュリティを強化した形で引き継がれています。
また LTI 1.1 でも、 Basic Outcomes service では、0.0~1.0の範囲の10進数の数値成績のみであれば、成績情報をやりとりすることができました。 LTI 1.3 ではこれらが拡張されています。

以下が LTI1.3 で追加された機能です。

・Names and Role Provisioning Services (NRPS)
(名前と役割のデータを引き渡し)

・Deep Linking (DL 、ディープリンク)
プラットフォーム*が外部ツールから収集したコンテンツをより簡単に統合)

・Assignment and Grade Services (AGS)
(複数リソースからの成績、進捗、コメントをプラットフォームの成績表に同期)

LTI 1.3 で上記の機能が追加されることで、 LTI 活用の幅が飛躍的に広がりました。
これら3点の具体的な機能については説明すると長くなりますので、次回の記事で LTI 1.3 について、より詳しく紹介します。今回はまず、概念的な説明にとどめさせていただきます。

工数管理を人材育成に
 

 

※ツール (Tools)とプラットフォーム (Platform) とは

LTI 1.1 の機能で「Tool*内のテストの呼出しと実行」というものがありましたが、 LTI の話をするうえでは Tool や Platform という言葉を理解しておく必要がありますので、ここで説明させていただきます。

Tools (ツール)と Platform (プラットフォーム) について説明するにあたり、パソコンをイメージしていただくとわかりやすいと思います。
パソコンで言うとプラットフォームが「OS」、ツールが「アプリケーション」に値します。
マイクロソフト社の例でいうと、 Windows という OS がプラットフォームで、 Word や エクセルなどの Office アプリケーションをツールに例えることができます。

教育DX でのプラットフォームには、 Moodle などの LMS が利用されます。ここで受講者や役割の設定、教材の配信やコースの設定、成績データ等を扱います。プラットフォームはその名の通り、教育DXにおける管理基盤として中心的な役割を担っていると言えます。

一方、ツールの方は教材やテストツール、スケジューラーやチャットなど、プラットフォームからの LTI接続 を介して利用する教材や教育補助ツールを差します。 LTI を利用することで、学内だけでなく外部ツールも利用することができます。
 

 

LTI の現場で起きていること

弊社にも LTI のバージョン関連で受託開発のご相談をいただく機会が増えていますが、以下のような内容が多くなっています。

①LTI で教材やツールをシームレスに学べるようにしたいが、どちらのバージョンにすべきか相談したい

②現在非推奨となっている LTI 1.1 をベースに開発したものを、 1.3 にバージョンアップしたい

③LTI 1.3 を導入して文科省の CBT システム(MEXCBT)など外部ツールと連携したい

上記にはあえて具体的な例をあげていますが、実際には「学内(社内)で LTI 化せよと言われているが、そもそも LTI 化で具体的に何ができるかわからない。」「LTI をどうやって導入して何をすべきか教えてほしい。」という段階のご相談をいただき、コンサルティングから入らせていただくケースが多いかもしれません。

スパイスワークスでは LTI 関連の開発において、国内でも有数の実績があります。
学習システムの LTI 化、 LTI 1.3 へのバージョンアップを検討されているようでしたらこちらからご相談ください
 

 

ラーニングアナリティクスを実現するためのシステム構成

ラーニングアナリティクスを解説するにあたり、初回の記事で「ラーニングアナリティクスを実現するシステム構成」を以下のような文章で表現しました。

LTIでLMSや教材・ツールなどをまとめ、LRSにxAPI形式でデータを保持することでラーニングアナリティクスの環境を構築する。

そして前回と今回の2回にわたり、上記文章の、「LTIでLMSや教材・ツールをまとめ、」の部分について説明させていただきました。

LTI は全体の鍵を握るところですので、次回はさらに深掘りして、 LTI の最新バージョン LTI 1.3 で実現できる機能についてご説明いたします。


【出典・参考文献】
・1EdTech : Security Update and Deprecation Schedule for Early Versions of LTI
・1EdTech : Trusted Exchange of Student Data – Why Platforms and Tools Should Adopt LTI 1.3
・情報メディア教育研究センター 常盤 祐司 : LTI1.3およびLTI Advantageの概要と課題 -日本における適用可能性-