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#58 文系でも理解できる教育DX:LTI 編

LTIによる教材統合
前回の記事(#57 文系でも理解できる教育DX:ラーニングアナリティクス編)では、「ラーニングアナリティクス」についてご説明しました。
その記事の最後でラーニングアナリティクスを実現するための一般的なシステムの構成として、

LTIでLMSや教材・ツールなどをまとめ、LRSにxAPI形式でデータを保持することでラーニングアナリティクスの環境を構築する。

とご紹介しましたが、これではあまりにも乱暴な表現で、一つの文章に無理やりまとめていますので、ご理解に苦しむかと思います。とはいえこの文章を理解できれば、ラーニングアナリティクスを実現するシステム構成をおおよそ理解できていることになります。今回以降の記事で、この内容をご理解いただけるように一つひとつ紐解いていきたいと思います。
まず今回の記事では、文頭にある「LTIでLMSや教材・ツールなどをまとめ、」という部分についてお話します。

【目次】

  1. LTIとは?
  2. LTIにできること①:教材や学習ツールの統合
  3. LTIにできること②:横断的な学習データの活用
  4. LTIさらっとまとめ
  5. LTIの現場で起きていること
  6. MEXCBT との連携
  7. 教育DXの未来とLTI
  8. ラーニングアナリティクスを実現するためのシステム構成

 

LTIとは?

まず「 LTI (エルティーアイ)」というのが聞きなれない言葉であったり、よく話は聞くけどイマイチ意味がわからないという方のためにご説明します。

LTI ( Learning Tools Interoperability ~ラーニング ツールズ インターオペラビリティ~)は、直訳すると「学習ツールの相互運用性」となります。

「LTI」は 1EdTech Consortium によって開発された規格で、技術標準であり、特定の製品を差すわけではありません。( IMS Global : LTI Fundamentals FAQ )
LTIという規格に則ることにより、「講師や受講者の負担を最小限に抑えながら、1つのツール(教材や学習ツール)から他のツールへシームレスに移行することができるようになる」とされています。
 

 

LTIにできること①:教材や学習ツールの統合

前出のように、様々な教材や学習ツールを、シームレスに連携することができるというのが、 LTI の大きな特徴の一つです。
今まではそれぞれの教材があり、スケジューラー、チャットなどの学習ツールにもそれぞれ ID・パスワードが紐づいており、生徒も教員も都度認証画面を通してログインしていたかもしれません。

LTIを介すことによって、それらのアプリケーションへのシングルサインオンが可能になります。つまり、一度ログインすれば他の教材やツールにも、まるで一つのアプリケーションを使っているようにシームレスに移動できるのです。
ユーザーが各教材や学習ツールなどを行き来する時も、ユーザー情報や役割(教員、学生、TAなど)などの情報を受け渡すことができます。
さらに、学内だけでなく、第三者が提供しているコンテンツを学習プラットフォーム(多くの場合LMS*)内で起動することもできます。
 

 
※LMSとは
LMS(Learning Management System ~学習管理システム~)とは、オンライン教材の作成、管理および学習者への配信を支援するソフトウェアです。学生の参加状況や成績を管理することもできます。
分散型自律組織
 

 

LTIにできること②:横断的な学習データの活用

また、各ツールをシームレスにすることで、スコアや修了率などのデータも横断的に利用できるようになるので、総合的な学習分析(ラーニングアナリティクス)が可能となります。教育機関としてはこれらのデータを分析して、カリキュラムの最適化、教員や学習者の最適な配置などに活用することができます。
 

 

LTIさらっとまとめ

以上のように、LTIについて説明させていただきましたがいかがでしょうか?
LTIの有用性をさらっと簡単にまとめると、以下2点になると思います。

①教員や学生が、1つの入口から各教材やツールにシームレスに移動できる。

②各教材やツールの学習履歴や成績などを横断的に利用できる。

要するに、 LTI という標準規格で既存の教材やツールをまとめることで、教員や学生も、分析する立場の人も、便利になるということです。
 

 

LTIの現場で起きていること

弊社にも教材やツールのLTI対応についての受託開発のご依頼が増えていますが、LTI化をご依頼いただく目的は大きく以下3つに分かれます。

①教材やツールがバラバラになっているので、シングルサインオンでシームレスに学べるようにしたい。

②学習データがバラバラになっているので、横断的にデータ活用できるようにしつつ、学習状況を可視化してラーニングアナリティクスに活用したい。

③学内のプラットフォームから第三者が提供するコンテンツに連携したい。

現場の私たちは日々上記のような内容を、それぞれ個々だったり組み合わせだったりという形で請け負っております。

ちなみに、「③第三者が提供するコンテンツ」については、文部科学省の CBT*システム(MEXCBT:メクビット)と連携したいというお話も増え始めています。

※CBTとは
Computer Based Testing の略で、コンピュータを利用して実施する試験のこと
 

 

MEXCBT との連携

少し話はずれますが、前段の流れから、 MEXCBT について簡単に説明します。以下が文部科学省のサイトにある MEXCBT の説明です。

文部科学省では、GIGAスクール構想により、児童生徒1人1台端末環境が整備されたことを踏まえ、児童生徒が学校や家庭において、国や地方自治体等の公的機関等が作成した問題を活用し、オンライン上で学習やアセスメントができる公的CBT(Computer Based Testing)プラットフォームである「文部科学省CBTシステム(MEXCBT:メクビット)」の開発・展開を進めています。
文部科学省CBTシステム(MEXCBT:メクビット)について

簡単にいうと、学校のプラットフォームから LTI を介して生徒が MEXCBT に接続すると、公的機関等が作成した問題に取り組むことができるということです。
またそのテスト結果などのデータも、学内のプラットフォームに受け渡すことが可能です。
教育DXの未来
 

 

教育DXの未来とLTI

このように、日本でも国をあげて取り組んでいるGIGAスクール構想。
今後の教育DXがどのような方向に進むかはわかりませんが、今回取り上げた LTI 標準については、オンライン教材に取り組む担当者としては、無視できない規格です。
将来を見据えて対応を検討してみてはいかがでしょうか?

> LTI 対応についてはこちらからご相談ください。
 

 

ラーニングアナリティクスを実現するためのシステム構成

今回は以下、ラーニングアナリティクスを実現するシステム構成を説明する文章の、「LTIでLMSや教材・ツールをまとめ、」の部分について説明させていただきました。

LTIでLMSや教材・ツールなどをまとめ、LRSにxAPI形式でデータを保持することでラーニングアナリティクスの環境を構築する。

次回 LRS、xAPIと進みたいところですが、教育システムの LTI 化に手を付けることになると、LTI のバージョンについての課題が出てくると思います。そこで迷うことのないよう、次回の記事では LTI 1.1 と LTI 1.3 の違いについて、ご説明したいと思います。


【出典・参考文献】
・IMS Global : LTI Fundamentals FAQ
・WikiPedia : Learning Tools Interoperability
・文部科学省 : 文部科学省CBTシステム(MEXCBT:メクビット)について
・moodle:What is an LMS? Learning management systems explained
・TechTarget : learning management system (LMS)