PMBOK 其の十九:プロジェクトの職務⑧〜組織の方針とチームをつなぐ「ガバナンスの維持」編
【戦国PM講座】
~PMBOK から学ぶプロジェクトマネジメント標準~
ミネアサヒの指導のもとOJTでWEBディレクションの経験を積んできた新之助は、一層のスキルアップを目指し、PMBOKに基づく「プロジェクトマネジメント標準」を学び始めた。プロジェクトに関連するさまざまな職務のうち、「資源と方向性の提供」では、プロジェクト・チームを支え調整役となる人の存在を知った。さて、今回は……。
~ プロジェクトマネジメント標準 2.3.8 ガバナンスの維持 ~
ここまで「プロジェクトに関連した職務」を順番に解説してまいりましたが、今回がその最終回。最後は「ガバナンスの維持」です。
それでは、PMIの説明を確認してみましょう。
ガバナンスの職務を果たす人は、プロジェクト・チームによる提言を承認および支持し、望ましい成果達成に向けたプロジェクトの進捗を監視する。また、プロジェクトの最中に変わる可能性のある戦略目標や事業目標とプロジェクト・チームとのつながりを維持する。
(PMBOKガイド第7版 【プロジェクトマネジメント標準】2 価値実現システム / 2.3.8 ガバナンスの維持)
前々回の「事業の方向性と洞察」、前回の「資源と方向性の提供」と同様に、こちらもプロジェクト・チームより一つ上のレイヤーにあたる職務であることがわかりますね。
「ガバナンス」とは何か、もう少し詳しく見てみましょう
ガバナンス:確立済みのポリシー、実務慣行、その他の関連する文書を通じて、組織の方向性を決定し実現するための枠組み。
(PMBOKガイド第7版 用語集 /ガバナンス)
つまり、「ガバナンスの維持」とはこの“枠組み”を守ることに当たります。
ここで注意したいのは、組織の方向性とは内部・外部のさまざまな要因に応じて絶えず変化するものである、という点です。もしマーケットの変化に応じて開発戦略を変えるとなれば、プロジェクト・チームの動きもそれに対応させなくてはなりませんね。
ですから「ガバナンスの維持」の役割は、プロジェクトが組織全体の方向性とずれないように監視しつつ、プロジェクト・チームからの提言などを受け入れて、判断し、承認・サポートすることとなります。維持といっても、当初の方針を頑なに保つことではないことに注意しましょう。
新之助さんのクライアントA社さんのお話に戻りますが、オンライン販売の軸足という「方向性」が自社サイトから大型ECモールに変わったということで、新之助さんが担当されるブランドサイトに影響が出ているということです。
組織の方向性(戦略目標や事業目標)がブランドサイトを運用するプロジェクト・チームにきちんと伝わっているということで、殿が「ガバナンスが効いている」とおっしゃっていたんですね。
さて、ここまで8種類の「プロジェクトに関連した職務」について解説してきましたが、それぞれの役割が理解できましたでしょうか? といってもこれらが全てではなく、プロジェクトの内容や目標によってはこれ以外の職務が必要になることもあります。
大切なのは、それぞれにどのような役割があるのか、自分がその中でどの役割を担うのか、そして、それ以外の役割を誰に果たしてもらうかを明確に意識することです。みんなの役割があるからこそ、プロジェクトが進行できることを忘れないようにしましょう。
(^^♪ 次回:プロジェクトに影響を与えたり与えなかったりする?「環境」のお話
【出典・参考文献】
Project Management Institute, Inc.
プロジェクトマネジメント知識体系ガイド
PMBOKガイド 第7版+プロジェクトマネジメント標準
一般社団法人 PMI 日本支部,2021.274p