PMBOK 其の十八:プロジェクトの職務⑦〜上級管理職との調整役「資源と方向性の提供」編
【戦国PM講座】
~PMBOK から学ぶプロジェクトマネジメント標準~
ミネアサヒの指導のもとOJTでWEBディレクションの経験を積んできた新之助は、一層のスキルアップを目指し、PMBOKに基づく「プロジェクトマネジメント標準」を学び始めた。プロジェクトに関連するさまざまな職務のうち、「事業の方向性と洞察の提供」では、PMでは判断できないレベルの問題を線引きし、相談することの重要性を学んだ。さて、今回は……
~ プロジェクトマネジメント標準 2.3.7 資源と方向性の提供 ~
新之助さんがPMを務める自社サービス開発プロジェクトでは、新機能の追加開発が決まり、そのために人員も補強されたようです。こうした資源の追加や最終期限の調整など上位レイヤーの判断には、プロジェクト・チームの枠内には収まらない、「資源と方向性の提供」という職務が関係しています。
PMIの解説を確認してみましょう。
この職務を果たす人は、プロジェクトを推進し、組織のビジョン、ゴール、期待をプロジェクト・チームやより幅広いステークホルダー・コミュニティに伝達する。また、プロジェクト活動が進むように、意思決定、資源、権限を確保しやすくすることで、プロジェクトやプロジェクト・チームを支持する。
(PMBOKガイド第7版 【プロジェクトマネジメント標準】2 価値実現システム / 2.3.7 資源と方向性の提供)
この職務は、プロジェクト・チームを率いる新之助さんと、組織のビジネス全体を統括する上級管理職との間に入る立場にあります。組織がプロジェクト・チームに期待することを伝え、プロジェクトと事業目標を合致させる方向で動くのと同時に、プロジェクト・チーム内では判断できない課題に対処します。
例えば、開発のために追加資金が必要になったり、ローンチの延期が必要になった場合、プロジェクト・チームがそれを勝手に決定することはできませんね。この職務の方は、それらを上級管理職やステークホルダーと調整し、解決するという調整役も担っています。今回の新之助さんのケースでは「新しい機能を追加する」「それに伴う人員を補強する」といった判断も、上級管理職との調整が必要な部分ですね。
そのためにも日ごろからプロジェクト・チームだけでなく、より幅広いステークホルダーとコミュニケーションをとっておくことが大切です。
さらに、この職務にはプロジェクト終了後もお役目があります。そのプロジェクトによって意図したベネフィットが実現されているどうか、プロジェクトの成果を監視することです。
新之助さんがマネジメントするプロジェクト・チームの働きはもちろん、通常はチームの外側にある職務の働きも、プロジェクトの成功にとって重要なものなのですね。
(^^♪ 次回:上から下まで、一貫性がプロジェクトの核!
【出典・参考文献】
Project Management Institute, Inc.
プロジェクトマネジメント知識体系ガイド
PMBOKガイド 第7版+プロジェクトマネジメント標準
一般社団法人 PMI 日本支部,2021.274p