クリエイティブ環境を劇的に改善する究極の二人羽織制度『ペアクリエイション』
◆ペアクリエイションとは
このブログの中で、弊社のプログラマー、デザイナー、ディレクターがペア体制で作業を行っていることを、過去3回に分けてご紹介してきました。
簡単にご説明しますと、それぞれ以下のような手法で作業を行っています。
【ペアプログラミング】
一人がプログラミングを行い、もう一人はそれを見ながら指示をしたり相談したりして開発を進めます。
『試してわかった!ペアプログラミングの面白さ』
【ペアディレクション】
資料制作やメール連絡などの実作業をする「プレイヤー」と、プレイヤーのタスクと優先順位を管理して指示を行う「マネジャー」の2名でディレクションを行います。プレイヤーとマネジャーは一定期間で交代します。
『スパイスで実践中!ディレクターの悩みを解決する驚愕の体制とは!?』
【ペアデザイニング】
クライアントからのオリエン、要件のまとめ、アイデア出し、制作したデザインの確認作業などをペアで行います。(デザイン制作実作業は一人で行います)
『共創がもたらすデザインへのアプローチ ~ペアデザイニング~』
弊社ではこれらを総称して「ペアクリエイション」と読んでいます。
今回は経営的な視点から、ペアクリエイションについてまとめてみたいと思います。
◆ペアクリエイションのメリット
これら全ては「一人じゃない」仕事の仕方という点で共通していますが、業務の中での具体的なメリットとしては以下のようなものがあげられます。
①見当違いやミスなどを事前に補正できる。
→もう一人の目で指摘が入ります。
②相談しながら進めることで、一人で迷宮に迷い込むことを避ける。
→特にデザインなどは、アイデアが出ずに一人で悩む時間が大きな割合を占めます。
③人の仕事の仕方を見ることで学び合う。
→良いところも悪いところも「人の振り」を見て学べます。
④「あの人しかわからない」がなくなる。
→ペアで共有するうえに、一定期間でペアのうち一人を交代しますので、長い案件は多くの人が把握できるようになります。何かあって手伝う際も、「人の仕事」という感覚ではなく「懐かしのあの仕事」になります。
⑤個人への負担の集中が軽減できる
→常に相談しながら進めるのでリソース確保も早めに動けます。
以上を端的にまとめてしまいますと、以下のような効果となります。
①品質管理
②業務効率化
③人材育成
④情報共有
⑤負荷分散
これらの問題解決はどこのクリエイティブ現場でも成し遂げたい内容ではないでしょうか?
これだけのメリットがあるのですから、是非とも導入を!
・・・と、言いたいところですが、
簡単に解決できる問題でないのも事実です!!
ここでツッコミの声が聞こえてきます。
二人なんだから当たり前じゃん!
人件費も2倍でしょ?
う~ん。
確かに・・・。
やっぱりダメか(^^;)・・・
いえいえ!
そうとも言い切れません。
◆ペアクリエイションを始めたきっかけ
まずは弊社がこの取り組みを始めたきっかけをご紹介します。
弊社は少数精鋭(自分で精鋭というのも何ですが)体制、しかも受託開発が中心のため、時期によって業務量に波があります。
業務量が多い時はやはり個々の負荷が高まってしまいます。
結果的に
思うように仕事が回りきらない・・・
↓
進行が後手後手になる・・・
↓
誰かに頼もうにもあまりにも時間がない
↓
説明する時間ももったいない・・・
↓
自分でやるしかない・・・
↓
そしてさらに忙しく・・・
↓
他のプロジェクトも思うように回りきらない・・・
↓
進行が後手後手になる・・・
↓
・
・
・
負のスパイラルですね・・・。
特にディレクターはこの状況で顧客と制作メンバーの両方に挟まれるので、プレッシャーを一人で受け続けるのはなかなか堪えます。。。
弊社でも実際にこういった負のスパイラルでメンバーが退職してしまうという悲しいケースがありました。
そんな時にペアプログラミングを実践している先輩の話をお聞きして「これだ!」と思いました。
システム開発業務などは、アサインの段階から正確にボリュームを把握できるケースは稀です。大概は「思ったより大変だった」となってしまいます。
上司が部下に20kgの荷物運びをお願いしたつもりが、蓋を開けてみれば実は50kgの荷物だったとします。
こんな時、二人なら相談してどうにか運ぶことができるでしょう。
しかし一人だと無理をして腰を痛めてしまうかもしれません。
わたしたちが一番大切にしているのは「孤独でない」こと。
常に隣にパートナーがいて、相談しながら業務を進められることです。
あなたが部下だったとき、上司に相談したのはどれくらいの頻度でしょうか?
週1回?
月1回?
この間に問題は膨らんでしまい、上司に「相談があります」と言った時点ではすでに退職を決めてしまっているというケースもあります。
しかしペアクリエイション体制であれば、否応なしに日に何度も相談しながら業務を進めなければなりません。
◆気になる人件費について
結果的に人件費が2倍になってしまうように見えますが、実際はそうでもありません。
二人の目で確認しながら進めるので、勘違いの方向に突き進んで無駄な時間を費やしてしまうリスクを軽減できます。
また、システム開発などは手戻りが大きなコストとして跳ね返りますが、二人の目がありますので手戻りも軽減できます。
上記のような効率化ができるので、2人で1人分ではなく実際は1.5人分以上、うまくいけば2人分近くの仕事に対応できます。
そして、ペア体制にすることでお互い苦手な部分を補完し合えますので、新人でも比較的早く現場に入ることができ、人材育成コストが軽減できます。
仕事から「孤独」を取り除くことで、退職リスクを減らすという意味でも大きな効果があります。
退職リスクが減ることは、求人コストと新人の人材育成コストの両方を軽減することにつながります。
求人対策でいくら見栄えの良い福利厚生を用意しても、結局仕事の内容が劣悪であれば人は残ってくれません。
実際の仕事が良くなることが、職場環境改善の本質だと思います。
以上を考えますと、人件費が跳ね上がる分は他の部分でかなり補えていると実感しています。
・・・といったところで、ペアクリエイションの良さをお伝えすることはできましたでしょうか?
一件落着・・・・
と、言いたいところですが、もちろん人件費の他にもデメリットがありますのでご紹介します。
◆ペアクリエイションのデメリット
①気が合わない
気が合わない人と半年間ペアを組まされる・・・
考えたくもないですね~。
ペアでみっちり仕事をする以上、基本的な価値観が違っていると大きなストレスになります。採用時には会社の価値観と合っているかどうかを見極める必要がありますので、スキルの高い人でも採用できないケースが多く出てきます。組織で動くことを嫌う職人肌の人も合わないでしょう。
②独り立ちできない
ペアクリエイションは確かに快適で効率的です。
しかし、いざ一人でやらなければならない状況になった時、その人は立ち回れるでしょうか?
これを考えると、ある期間一人で動くことも人材育成のうえで大切です。
いずれにしてもメンバーが奇数になるとペアから漏れる人が出てきますので、そういう時は一人で作業することを学ぶ良い機会です。
③連絡系統が複雑になりがち
ここはきちんとやらないと、お客様から「どちらに連絡したらいいの?」と言われてしまいます。
弊社では各案件のメーリングリストを立ち上げて運用しています。
◆まとめ
以上のようなデメリットはありますが、やはり一番勇気がいるのは人件費のところだと思います。
弊社でも最初からいきなり採り入れたわけではなく、徐々に採り入れつつ改善しつつ、一職種ずつ採用してきました。
各企業様で最適な方法があるかとは思いますが、この記事が何かのヒントになって皆さまの職場環境改善につながれば何よりうれしいです。
最後にここで一句。
ペアクリエイションを体験したメンバーの川柳をご紹介します。
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気づいたら きみの口癖 うつってる
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