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edit 関根 聖二
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#56 なぜ日本の中小企業が「売上半減」に備える必要があるのか

売上半減
世界を震撼させたパンデミックも終息に向かうと言われ、ようやく需要も回復するかと思いつつ、なかなか上昇気流に乗ることができない日本経済。「売上半減」というのは少しショッキングな表現のようですが、中小企業経営者はそこに備える必要があると考えています。
ここではその理由と対処法をお話します。

【目次】

  1. 会社経営は「分配」「投資」「貯蓄」のサイクルが基本
  2. このシンプルな法則こそ継続が難しい
  3. 経営の安定には売上の安定が早道
  4. とはいえそれができれば苦労しない
  5. 固定費とは
  6. 変動費とは
  7. 固定費を変動費へと切り替える
  8. 外部パートナーを有効活用したクラウド型組織で、固定費を抑える
  9. 外部パートナー活用で納品物のクオリティは下がらないのか?
  10. なぜ日本企業が「売上半減」に備えなければいけないのか
  11. クラウド型組織の基本は社内の少数精鋭と頼れる外部パートナー
  12. 外部パートナーの情報をDXでデータベース化する
  13. DXアプリに日報登録すれば、外部パートナーの情報も蓄積
  14. 「外注パートナー」「DXアプリ」「クラウド型組織」活用で、経営の安定を図る

 

会社経営は「分配」「投資」「貯蓄」のサイクルが基本

会社経営を継続するための基本中の基本は、売上から経費を差し引いた「利益」を出し続けることです。なんといっても、利益がなく損失が続いてしまったら会社は継続できません。

そして、利益をもとに社員に報酬を「分配」し、さらなる成長に向けて「投資」し、いざという時のために「貯蓄」する。
分配」「投資」「貯蓄」の3つを滞りなく継続していくことで経営が安定し、企業が成長するのです。
 

 

このシンプルな法則こそ継続が難しい

こうして書くのは簡単ですが、実行するとなると、そう簡単にはいきません。
売上が増えてやっと社員の報酬を上げられたと思ったら、次の期に売り上げが減り赤字に・・・。
そしてやっと売り上げが回復した!・・・と思ったら、忙しくなって業務負担が重くなり、ハードワークで社員が去ってしまった・・・。
成長のために投資したと思ったら、予想もしないパンデミックが起こって改修不能に・・・。

このように、常に思い通りに行かないのが中小企業の現実。社員や経営者が日頃から勤勉な努力を継続しているにも関わらず、中小企業は思わぬアクシデントなどの影響を受けやすく、経営を安定させるのは至難の業なのです。
 

 

経営の安定には売上の安定が早道

では、経営を安定させるにはどうすればいいのでしょうか?
理想を言えば、安定した売上を確保できることです。
売上が安定していれば予算が立てやすくなります。
売上から経費を引いて、そのうち一部を昇給に当て、一部を投資に、一部を貯蓄に回す予定を立てられれば、会社は着実に成長します。
売上の安定があれば、経営はそれほど難しく考える必要はありません。
 

 

とはいえそれができれば苦労しない

とはいえ、中小企業の売上を安定させるのはそう簡単なものではありません。
時には売上が経費を下回ってしまい、赤字を出してしまうこともあるのです。
たまたま売上が高い月にそれを補って、なんとか回っているという状況であればまだいい方で、自転車操業に陥ってしまう企業も少なくないのが現状です。

先にあげた「売上の安定」が実現できればそれに越したことはありませんが、それができれば誰も苦労しません。

しかし、そんな不安定な売上の状況を克服する体制を構築できる方法があります。

 

一体、どうすれば売上が不安定でも安全な経営を継続できるのでしょうか・・・

 

それは、「固定費の割合を下げ、変動費の割合を上げる」ことです。

 

売上半減でも利益を確保

Various metal coins lie on the table. Money and finance concept

 

 

固定費とは

固定費というのは、売上に連動せず、一定の値で発生する費用のことです。
・人件費
・地代家賃
・水道光熱費
・リース料
などがこれにあたります。

これらは売上が下がってもすぐには減らせません。
 

 

変動費とは

変動費は売上に連動して増減する費用のことです。
・外注費
・原材料費
・仕入原価
などがこれにあたります。

売上が下がれば、仕入れや外注への発注量を減らすことが可能です。
 

 

固定費を変動費へと切り替える

業種にもよりますが、例えば弊社のようなIT関連の中小企業の固定費で大きなウェイトを占めるのは「人件費」や「地代家賃」などです。
売上が下がってもこれらを下げるわけにはいかず、売上が固定費を下回った時には大きなマイナスが出てしまいます。
この固定費を極力減らし、変動費に切り替えるのです。
とはいえ、個々人の給与を減らすわけではありません。
 

 

外部パートナーを有効活用したクラウド型組織で、固定費を抑える

具体的には外部パートナーを有効に活用するのです。

社内には最低限の少数精鋭部隊を確保し、プロジェクトが発生した時に、そのプロジェクトにマッチした専門知識を持つ外部パートナーとチームを作り、プロジェクトが完了したら解散する
これを私は「クラウド側組織」と呼んでいます。

この方法をとれば、固定費は最低限に抑えられ、安全な経営を持続できます。

「安全な経営」ということを具体的な数字をもとにご説明すると、固定費の割合を売上の1/2に抑えておけば、いざ売上が半分になった時でも、社内で仕事を回すことで赤字を回避できるというです。

外部パートナーの有効活用
 

 

外部パートナー活用で納品物のクオリティは下がらないのか?

外部パートナーの活用というと、社内で制作しないことで品質が下がるのではないかと考える方もいるかもしれません。それはもちろん活用の方法やパートナーの選定によって変わってきますので、本記事の後半にゆずります。

とはいえ、例えば社内のメンバーは、日々組織だからこそ必要なコミュニケーションや手続きなどの作業をしながら現場の業務にあたっています。また特に中小企業では、ある定度広い範囲に対応できるスキルが必要となります。しかし、フリーランスという立場であれば、自分の専門分野に特化して、組織論に邪魔されずに追求し続けることができるのです。

一分野に特化したプロフェッショナルとして能力を鋭く磨き上げるというのは、会社に所属して幅広い対応力を求められる「社員」という立場ではフリーランスより不利な部分があります。フリーランスの方々を有効活用することで、そういった特化型のプロフェッショナルにプロジェクト単位で業務を依頼できるので、クオリティは必然的に高くなります。

ちなみに弊社で最も活躍している外部パートナーは、元社員で独立したフリーランスの人たちです。彼らは元々スキルがあったにも関わらず、フリーランスとなってさらに専門分野に特化して磨きをかけているので、非常に力強い味方です。
 

 

なぜ日本企業が「売上半減」に備えなければいけないのか

「売上が半分に」というと大げさに聞こえるかもしれませんが、日本で経営するには大きなリスクが潜んでいるのです。
売上半減につながりうる危機は、大きくわけると以下4つあります。
① 経済危機
② 感染症
③ 災害
④ 戦争

日本で起こりうる災害

一つ目の「経済危機」。2008年のリーマンショックは世界経済にも非常に大きな危機をもたらしましたが、特に日本は、他国と比べても回復が遅い状況にありました。

感染症」についても、日本固有の問題ではありません。2000年以降を見ると、新型インフルエンザ、SARS、MERS、新型コロナウィルスなどが知られていますが、SARSや新型コロナウィルスは隣国で発生しています。そして感染が拡大すれば、行動制限などで経済にも影響が及びます。

災害」については言うまでもないでしょう。兵庫、東北、熊本などの地震では大きな被害が出ましたが、洪水や噴火などもあり、経済にも影響を及ぼします。今後も南海トラフや首都直下地震が言われており、内閣府のサイトでは海溝型地震について、「10年以内にM7.5前後の地震が発生する確率は60%程度、30年以内だと99%」と記されています。
災害は日本では特に備えが必要な要素です。

戦争」については意見が分かれるところです。確かに日本では平和な時代が続いていますが、本当にこのまま平和が続くとは言い切れません。隣国が民主主義国でない場合、戦争の可能性が高まると言われていますが、日本の隣はロシア・北朝鮮・中国と専制主義国が3国もあります。その中でもロシアは戦争中(2022年9月現在)ですし、隣国の台湾で何かあれば、日本にも大きな影響があるでしょう。戦争となれば経済への影響は計り知れません。

このように日本の環境を客観的にとらえてみれば、どんなに経営を頑張っていても急に業績が落ちるケースは、いくらで想定できますし、2000年以降で考えても、上記のうちいくつものケースが発生しています。

我々日本人の巨大リスクに対する向き合い方としては、ことが起きてから「起こってしまった!」と慌てるではなく、これらのアクシデントが「起こるもの」と認識して動く必要があるのです。

いつ何があるかわからない状況で、売り上げが急に半分になることも、想定に入れた準備をしておく必要があります。
 

 

クラウド型組織の基本は社内の少数精鋭と頼れる外部パートナー

そこで重要になってくるのが前述の「クラウド型組織」を実現することです。
これからの中小企業にとって重要なのは、今までの組織のように会社が成長したから社員を増やし、オフィスを大きくするのではなく、変動費の割合をあげ、固定費は売上の半分以下に抑えることです。

とはいえ、ただ単に社員を少なくして外部パートナーを増やすだけでクラウド型組織ができあがるわけではありません。一つの条件として、社内のメンバー強化があります。繁忙期には外部に委託し、売上が下がった時には社内でプロジェクトを回せるよう、プロジェクトマネジメント能力を持ちながら、それぞれに専門知識を持っている人材を育成する必要があります。

これは難しそうに聞こえるかもしれませんが、現場で働いている人はすでに専門知識とプロジェクトマネジメントのどちらかは持っているはずです。持っていない方を、一定のレベルまで学べばよいのです。

そして外部パートナーについては、自社のプロジェクトに対応できる専門知識と高いクオリティが求められます。そういったパートナーは簡単には見つかりませんので、常にアンテナを張りつつ、出会ったパートナーとは良い関係を築き続ける必要があります。
 

 

外部パートナーの情報をDXでデータベース化する

クラウド型組織を構築するためには、外部パートナーと良い関係を継続するための仕組みづくりも大切な要素と言えます。

そこで活躍してくれるのがDXです。

弊社で開発・運用を行っているDXアプリ「Playth(プレイス)」 では、得意分野を起点に外部パートナーを検索することができます。

外部パートナー絞り込み

リストアップされた外部パートナーについては、今までどのような業務を、社内の誰がいつ依頼していたのかというデータが蓄積されています。また、各プロジェクトのページには費用も登録されているので、どれくらいの価格で依頼できるのかが想定できるのです。
今までの発注回数や発注額の推移も一覧やグラフで閲覧できます。

その他、数字に出ないエモーショナルな部分は、以前依頼したことのあるメンバーに聞けば安心。社内のメンバーなので、忖度のない意見を聞くことができます。
これにより、社内のメンバーが外部パートナーに依頼する際の敷居が下がります。
また、外部パートナーに対する依頼が滞っているようならそれに気づくことができるので、滞りなく発注を継続することで有効な関係づくりにも役立ちます。

外部パートナー売上推移
 

 

DXアプリに日報登録すれば、外部パートナーの情報も蓄積

こういったデータを運用するのは面倒なのではないかというご意見もあるかもしれません。
しかしこれらのデータは、わざわざ外部パートナーのデータベースに手動で情報を追加しているわけではありません。プロジェクト工数管理のために日報を登録していれば、自然と蓄積されていっているので、管理の手間もありません。

これがDX活用によるビックデータ収集のメリットです。

 

 

「外注パートナー」「DXアプリ」「クラウド型組織」活用で、経営の安定を図る

① DXアプリを活用して外部パートナーとの関係を強化する仕組みを作る。
② プロジェクト単位でチームを結成するクラウド型組織を運用する。

この2ステップで、立ち上げたばかりの中小企業であっても、固定費を減らして経営の安定を目指すことができるのです。

外部パートナーの活用が益々重要になってくるこれからの日本。
益々激しくなる人材獲得競争に真っ向から挑むだけでなく、外部パートナーやDXを活用してクラウド型組織への移行を検討してみてもいいタイミングかもしれません。


【出展】

・内閣府 防災情報のページ 特集 地震を知って地震に備える!
https://www.bousai.go.jp/kohou/kouhoubousai/h21/05/special_03.html