#40 なぜ部下が育たないのか~②業務プロセスのドキュメント化が部下だけでなく自分をアップデートする理由
前回の記事で「部下を育てつつ自分をアップデートする上司の4つの行動」についてお話しました。その中で大切なことの一つとして、業務プロセスのドキュメント化という内容をあげています。今回は業務プロセスのドキュメント化について、ドキュメントを作る際の具体的な考え方をお伝えします。
◆業務プロセスのドキュメント化が大切な理由
まず、なぜ業務プロセスをドキュメント化することが大切なのか。
古くからの「職人」と言われる人たちの中では、「下積み」という期間が大切にされてきました。例えば和食の世界では、板前を目指して就職しても、包丁を持つまでに何年もかかるというのは当たり前に知られる話です。今回の記事ではこれを否定するということではありません。一般の仕事で、しかもリモートワークというのが当たり前になった状況で、いかに部下を育成してビジネスを成立させるかという内容です。
職人の世界では「勘」というものが大切にされます。これは確かにある一定以上の水準に行くには必須のもので、重視されて当然のものだと思います。
しかし一般の仕事では、ここまで研ぎ澄まされないと一人前になれないようではビジネスが成り立ちません。入社一年目・二年目など、いかに早い段階からビジネスに貢献できるかが組織の収益性に関わってくるのです。
例えばパン職人の世界でも、最高峰の職人には研ぎ澄まされた「勘」が必要だと思いますが、工程を細分化してみれば必ずしもそうではないプロセスもあります。昔の職人は上司の背中を見てその「勘」を盗みとることで、時間をかけて成長していきましたが、時間をかけなくて良い部分があるのも事実なのです。
どのような材料をどのような分量で調合し、どのような力で何分間こねるか。それを一つ何グラムの大きさに分け、何度の温度で何分焼き上げるかといった、定量的に業務プロセスを組める部分はあります。
これらの業務プロセスをドキュメント化することで、研ぎ澄まされた勘を持った最高峰の職人でなくても、多くの人がある程度の品質を保つパンを作ることができるようになり、それがさらに進めば工場でオートメーション化・ロボット化することができるようになるのです。
部下育成についても同じです。ドキュメント化できる業務プロセスの部分で上司が成長に貢献することで、普通の上司が普通の部下を、一人前のビジネスパーソンとして育成することがでます。
◆業務プロセスをドキュメント化する方法
【工程1:大項目のリストアップ】
ドキュメント化する工程では、まず大枠の業務プロセスをリストアップします。たとえばシステムの受託開発であれば、大枠として以下のような工程があります。
① 受注
② 要件定義
③ 設計
④ 開発
⑤ テスト
⑥ 納品
【工程2:中項目のリストアップ】
さらに細かくすれば「①受注」の中身も以下のような中項目に細分化することができます。
① 受注 [大項目]
├ ①-1 営業 <中項目>
├ ①-2 顧客からの相談 <中項目>
├ ①-3 ヒアリング <中項目>
├ ①-4 提案 <中項目>
└ ①-5 契約 <中項目>
【工程3:小項目のリストアップ】
ここまで細分化したら、さらに「①-3 ヒアリング」といった中項目の中ですべきことを小項目としてリストアップします。
たとえば、相談の内容をもとにヒアリングする前にできることとしては以下のようなことが考えられます
①受注 [大項目]
└ ①-3 ヒアリング <中項目>
・ ①-3-1 競合の調査(小項目)
・ ①-3-2 現状分析(小項目)
実際のヒアリングの際にも以下のような準備があるとスムーズに進みます
・ ①-3-3 ドキュメントの用意(小項目)
・ ①-3-4 アジェンダの用意(小項目)
・ ①-3-5 ヒアリングでの社内役割分担(小項目)
【工程4:小項目の注意事項をリストアップ】
あとはそれぞれの小項目について、注意点などをリストアップします。例えば「①-3-3 ドキュメントの作成」にはどういった注意が必要かをまとめるのです。以下のような基本的なものも含めます。
・ドキュメントの冒頭には目次をつける
・文字サイズは〇〇以上
・各ページにはページ番号を記載
各業務プロセスにおいて、すべきことをここまで細分化して具体的にドキュメント化しておけば、部下はそれを見て行動できますし、後でプロジェクトを振り返る際にも何ができていなかったかがはっきりと見えてきます。
前回の記事でもご紹介したように、こういったドキュメントを作成し、日々アップデートすることで部下が入れ替わっても人材育成が「仕組み」として残り、組織の成長と上司自身のアップデートにつながるのです。
ただし、業務プロセスをドキュメント化することがゴールではありません。これは人材育成において非常に重要な軸となりますが、有効活用しなければ意味がありません。ドキュメントを用意した上でDXを活用して部下の実際のワークログをデータ化し、データ化され可視化されたワークログとドキュメント化された業務プロセスをもとに 1 on 1 ミーティングなどのコミュニケーションを通じで部下に気づきの機会とアドバイスを提供することが大切です。
ワークログ可視化ツールとして弊社が活用している Playth (プレイス) 。DXは以前より手軽に利用できる存在になっていますので、お気軽にご相談ください。